新しいNISA制度
2024.06.06

NISAは短期売買に不向き?デメリットや、おすすめの投資運用の方法を解説

  • #新NISA
  • #つみたて投資枠
  • #分散投資
文/NISAセンター 松本智則
目次

    NISAとは、長期的な資産形成を目的とした少額投資非課税制度です。

    2024年1月から新NISAが始まり、新たに資産運用を始めようと思っている方の中には、NISAを使って短期売買をしようと考えている方もいるかも知れませんが、制度上短期売買には不向きです。

    本記事では、NISAが短期売買に不向きな理由や、新NISAを効果的に活用するためのポイント、注意点について解説します。

    新NISAの活用方法や、短期売買との相性を知りたい方はぜひ参考にしてください。

    NISAが短期売買に不向きな3つの理由

    NISAは短期売買に向いていないと言われています。
    なぜなら、NISAの制度自体が中長期の投資を目的に作られた制度だからです。
    ここでは、NISAが短期売買に不向きな3つの理由を解説します。

    中長期の投資を前提とした商品が多いため 年間投資枠の上限が決まっているため 損益通算を行えないため

    それぞれ詳しく見ていきましょう。

    中長期の投資を前提とした商品が多いため

    最初に説明したとおり、NISAは中長期の投資を目的とした制度です。
    また、2024年から始まった新NISAでは、非課税保有期間が無期限となり、旧NISAでの一般NISA、つみたてNISAのように非課税期間の終了を考える必要がなくなりました。

    投資対象商品については、次のように定められています。

    成長投資枠:上場株式・投資信託など
    つみたて投資枠:長期の積立・分散投資に適した一定の投資信託

    金融機関ごとに取り扱う商品は異なりますが、例えば、上場株式においては整理・監理銘柄は対象外である他、投資信託においては毎月分配型の商品や、デリバティブ取引を用いた商品は除外されています。

    特に、つみたて投資枠の対象商品は投資初心者をはじめ幅広い年代の方にとって利用しやすいよう、商品が限定されています。

    【つみたて投資枠の投資商品の特徴】

    金融庁が厳選した一定の投資信託のみ 手数料が低水準 分配頻度が毎月でないこと 信託契約期間が無期限または20年以上

    特徴を見てわかるようにつみたて投資枠で取り扱っている投資商品は、投資家が運用を続けやすいように設計されている投資信託となっており、短期売買には不向きです。

    年間投資枠の上限が決まっているため

    成長投資枠で株式投資を行う場合にも注意が必要です。
    成長投資枠の年間投資枠は240万円ですので、例えば、30万円を元手に短期売買を行う場合、1年間での買付可能回数は8回となります。

    仮に2週間に1回の頻度で取引を行った場合は、約4か月で年間投資枠を使い切ってしまい、その後、非課税枠を活用したいタイミングが来ても、投資ができない機会損失に繋がります。

    また、想定以上の値上がりをした場合、利益確定をすること自体は問題ではありませんが、短期間の投資では値上がりのタイミングを何度もつかむことは難しいでしょう。

    損益通算を行えないため

    NISAが短期売買に不向きな理由は、損益通算や繰越控除ができないからです。
    通常の株式売買なら損失と利益を通算できる他、損益通算の結果、損失が大きい場合、損失を翌年以降3年間にわたり繰り越すことができます。

    しかし、NISAでは税制優遇のメリットが大きい反面、損益通算はできないことになっています。

    NISA口座で損失が出て、課税口座では利益が出ているという状況でも損益通算はできず、課税口座での利益に税金がかかってしまいます。確定申告をしても損益通算することはできません。

    短期売買を行うならば、損失が出るリスクも踏まえて損益通算や繰越控除ができる課税口座での取引が向いていると言えるでしょう。

    新NISAを活用するための3つのポイント

    新NISAを始めようと思っている方は、以下の3つのポイントを押さえておきましょう。

    初心者はつみたて投資枠を活用する 分散投資を徹底する できるだけ早く新NISAを始める

    それぞれ詳しく見ていきましょう。

    初心者はつみたて投資枠を活用する

    投資初心者で新NISAを始めようと思う方は、まず新NISAのつみたて投資枠の中から金融商品を選ぶのがおすすめです。
    なぜなら、つみたて投資枠の商品は、金融庁の基準を満たした投資信託に限定されているからです。

    一方で成長投資枠は、旧NISAにおける一般NISA同様、国内外の上場株式やETF、投資信託などが投資対象商品となっています。

    つみたて投資枠の投資商品と比較すると、一般的にハイリスク・ハイリターンと言われる資産へも投資ができ、ある程度投資の知識があった方が安心して運用できるでしょう。

    新NISAで大切なのは、少額の積立から始めリスクを抑えつつ投資に慣れることと、徐々に興味・知識をつけていくことです。
    毎月1万円ずつでもよいのでつみたて投資枠で積立を始めることで、投資の流れを理解し、学んでみてください。

    分散投資を徹底する

    新NISAをはじめとした投資全般に言えることは、分散投資を徹底することです。
    分散投資とは、投資商品や地域、時間を分散させ投資商品の価格変動リスクを抑える投資手法であり、分散投資を行わず一つの商品に集中投資すると、損失が発生した時の対処が難しくなるデメリットがあります。

    新NISAではつみたて投資枠と成長投資枠の併用が可能になり、年間投資枠が最大360万円まで拡大したことで選択肢が広がりました。つみたて投資枠で安定的な運用をしつつ、成長投資枠で投資地域や対象が異なる投資信託や個別株に投資をするなど、制度を活用して自分なりのポートフォリオを作ることがおすすめです。

    できるだけ早く新NISAを始める

    新NISAは18歳から利用可能な制度です。
    長期運用の場合、早く始めた方が積立額も多くなり、時間を味方にした複利効果の期待値も増えるでしょう。

    例えば、20代の学生や新社会人であっても、生活費を確保した上で手元にあるお金の一部をNISA対象の投資信託に回すことができます。

    少額だとしても、長期にわたって複利の恩恵を受けられれば、将来になってまとまった資金が必要になったときに役立つかも知れません。

    少額から始められるからこそ、若い世代も投資に挑戦しやすい点は魅力と言えるでしょう。

    新NISAの運用における3つの注意点

    新NISAは上記で紹介したポイントを押さえることで、効率よく運用できますが、いくつかの注意点もあります。
    リスクヘッジにもなるため、以下の3つの注意点を確認しておきましょう。

    自分の無理のない範囲で投資する 一般NISAにあって成長投資枠にない商品がある NISA口座の商品は金融機関を替えても移せない点を理解する

    それぞれ詳しく解説します。

    自分の無理のない範囲で投資する

    新NISAをはじめ、投資全般に言えることですが、投資を始める際は、自分の無理のない範囲で行いましょう。

    例えば、新NISAのつみたて投資枠では年間最大120万円の非課税投資枠があります。
    しかし、非課税投資枠は全額資金を注ぎ込まなければいけないわけではありません。

    生活費を圧迫するような大口の投資は危険で、投資による損失を受けると生活するための資金を失うリスクがあります。

    新NISAで積立投資を行う場合、毎月の投資金額を事前に設定できます。
    まずは毎月の自分の生活費を把握し、余裕資金の中で投資可能な金額を事前に設定することが大切です。

    一般NISAにあって成長投資枠にない商品がある

    新NISAの成長投資枠の商品は、旧NISAの一般NISAで取り扱っていた投資商品すべてを引き継いでいるわけではありません。

    新NISAの成長投資枠と旧NISAの一般NISAの投資商品をまとめました。

    新NISA(成長投資枠) 旧NISA(一般NISA)
    上場株式
    ETF(上場投資信託)
    REIT(不動産投資信託)
    株式投資信託
    ※ただし、以下商品は除外
    ● 整理銘柄・監理銘柄に指定された上場株式
    ● 信託期間20年未満の投資信託
    ● 毎月分配型の投資信託
    ● デリバティブ取引を用いた一定の投資信託
    上場株式
    ETF(上場投資信託)
    REIT(不動産投資信託)
    株式投資信託

    出所:[一般社団法人投資信託協会NISAについてのQ&A]

    一般NISAで投資していた方で、新NISAでも同じ商品の購入を検討している場合は、事前に対象商品の運用ができるかを確かめておくとよいでしょう。

    NISA口座の商品は金融機関を変えても移せない点を理解する

    NISA口座を開設する金融機関を変更する場合、変更前のNISA口座で保有している投資商品は、変更後の金融機関のNISA口座に移すことはできません。
    また、NISA口座の金融機関の変更は、1年間につき1回しかできない点や、NISA口座を変更する年に、NISA口座を活用して商品の取引を行った場合、その年にNISA口座の金融機関変更はできない点にも注意が必要です。

    複数の金融機関でNISA口座を保有することは可能ではありますが、管理の煩雑さや長期の資産運用を考えると、運用を始めたあとは、なるべくNISAの金融機関変更は避けた方がよいでしょう。

    まとめ

    今回はNISAの短期売買について、NISAが短期売買に向いていない理由や新NISAを活用するためのポイント、および注意点を紹介しました。

    NISAは中長期の資産形成を目的にした制度で、短期売買には不向きと言えるでしょう。

    新NISAでは、旧NISAと比較して、非課税保有期間が無期限になり年間の非課税投資枠の金額が大幅に拡大したことで、利便性が格段に向上しました。

    しかし、投資できる金額が増えたからといって、投資額を一気に増やすのは危険です。
    新NISAを活用する際は、無理のない範囲での投資や、つみたて投資枠と成長投資枠との使い分けが重要です。
    NISAに関するご相談、質問をしたい方はぜひNISAセンターにご連絡ください。


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