景気日銀短観

日銀短観とは、日本銀行が実施している「企業短期経済観測調査」の略称です。
海外でも“TANKAN”という名称で広く知られており、その内容が注目されています。

日銀短観(企業短期経済観測調査)とは?

日本銀行が、全国約1万社の企業経営者を対象に景気の現状や先行きの見通しについてアンケート調査を行い、その回答を集計します。3月、6月、9月、12月に実施され、結果は4月、7月、10月、12月に公表されます。
その中で最も注目されているのは「業況判断指数(DI)」です。

業況判断指数(DI)の算出方法

調査の対象となる企業は、収益を中心とした全般的な業況の現状と先行きについて、「良い」「さほど良くない」「悪い」という3つの選択肢から回答を選びます。「良い」と回答した企業の割合から「悪い」と回答した企業の割合を引いて計算されたものが「業況判断指数(DI)」です。

DI(%ポイント)=良いと答えた企業数構成比(%)ー悪いと答えた企業数構成比(%)

《例》現状の業況について、「良い」と答えた企業が40%、「さほど良くない」と答えた企業が40%、「悪い」と答えた企業が20%の場合の業況判断DIは……

20%ポイント=40%-20%

業況判断指数(DI)からわかること

「業況判断指数(DI)」がプラスであれば景気は良い、マイナスであれば景気は悪いと判断します。
前回の調査結果と比較すれば、企業の経営者の景況感がどのように変化しているのかがわかります。また、業況判断指数(DI)には「現状」と「先行き(今後3ヶ月の見通し)」の2つがありますから、この2つを比べることによって、企業の先行きに対する見通しが的確だったのかどうかがわかります。
業況判断指数(DI)を見ていると、景気が悪いとき(業況判断がマイナス)だけでなく、景気が良いとき(業況判断がプラス)も、中小企業の方がDIが低いという結果が出ています。資金繰り(DI)も大企業と中小企業ではかなり差があります。

その他の項目からわかること

日銀短観で最も注目されるのは業況判断指数(DI)ですが、他にも、売上高、輸出に際しての想定為替レート、負債、現金・預金、人件費、雇用者数、新卒者採用状況なども調査項目に入っており公表されています。金融機関の貸し出し態度(DI)という項目もあり、銀行の貸し渋りが起きているのかどうかがわかります。
日銀短観は企業に対する調査結果を公表したものであり、日銀(日本銀行)の見解を示したものではありません。けれども、日銀が金融政策を決める際の判断材料の1つにはなっています。

バブル景気とバブル崩壊

1980年代終わりから1990年代初めにかけてバブル景気となりました。バブル景気のときは、株式や不動産が適正価格よりもずっと高い価格で取引されていました。そのため、「株式や不動産の取引は儲かる!」と考える人が多くなり、さらに新しく株式や不動産の取引をする人たちが増え、価格はどんどん上昇しました。

しかし、1990年に当時の大蔵省(現在の財務省)が地価の高騰を沈静化するために、不動産融資の総量規制を行いました。これは、「不動産関連のことにお金を使いたい」というニーズの融資(お金を貸すこと)を抑えるように規制するものです。結果的に、地価の高騰は沈静化しましたが、これをきっかけにバブル崩壊が始まりました。

不良債権と自己資本比率規制

バブルが崩壊すると、経営破綻や業績不振などによって、銀行が企業や個人に貸していたお金が期限までに返ってこなかったり、お金を貸す際に約束していた金利が引き下げられたりして、不良債権(回収困難な債権)が増えてしまいました。

金融システムを安定させるため、1993年から自己資本比率規制が銀行に対し本格的に適用されました(*)。銀行が貸したお金を返済してもらえなければ、不良債権の処理をするために、銀行自身の自己資本(返済する必要が無い資金)を取り崩すことになります。自己資本が大幅に減ってしまうと、銀行の経営が困難となってしまいます。自己資本比率規制とは、自己資本比率を一定水準以上に保つことにより銀行経営の健全性を確保するルールで、自己資本を8%以上に保つことを義務付けています(海外に営業拠点を持たない銀行の場合は4%以上)。

自己資本比率規制により銀行経営が守られるようになった一方で、本来であればお金を貸しても問題が無い相手であっても、新たにお金を貸す(融資する)ことを拒否する「貸し渋り」や、貸していたお金の返済をせまる「貸しはがし」が行われるようになったと言われています。

  • *1993年に本格的に適用されるようになったBIS規制は見直しをされ、2007年3月から新BIS規制が適用されることとなりました。